ウエステルダム号とは?カンボジア入港までの経緯

基隆に停泊するウエステルダム

2020年2月1日に香港を出港し14日間の台湾&日本クルーズに出たホーランドアメリカライン (Holland America Line) のウエステルダム号(ms Westerdam)。

しかし、中国湖北省武漢を中心に発生した新型コロナウイルス感染症の影響で各地での寄港が認められず、大幅なスケジュール変更を余儀なくされました。
なかなか帰港できる場所が見つからなかった中、カンボジア政府が入港を認め、2月13日にカンボジア南部シアヌークビルの港にウエステルダムは入港することになりました。

私たちはウエステルダム号を始め、ホーランドアメリカラインのクルーズ船に乗船したことがあるため、心配でホーランドアメリカラインの公式発表や報道を見守ってきました。

この記事では、ウエステルダム号がどのようなクルーズ客船なのか、またどのような経緯をたどって最終地のカンボジアに至ったのか、また到着後の経緯をホーランドアメリカラインの公式発表、報道発表をもとに追ってみました。

目次

ホーランドアメリカラインのウエステルダム号とは?

ウエステルダムは、ホーランドアメリカライン社が所有するクルーズ客船です。

ホーランドアメリカラインは、1873年にアメリカとヨーロッパを結ぶ海運会社としてオランダに誕生したプレミアムクラスのクルーズ会社です。
本社はアメリカ シアトルにありますが、所有するクルーズ客船はオランダ船籍です。

ウエステルダムは2004年に就航した中型のクルーズ客船で、11層(階)のデッキから構成されています。
船内にはショーなどを行うメインステージ、大小二つのプール、6つのレストラン、バー、カジノ、スパ、ショップなどがあります。

大きさは約80,000トン、定員2,000人弱で、船内で過ごしやすい程よい大きさだと言われています。
大型船の場合、乗船や下船の時や食事の時などに長い行列ができたり、時間がかかってしまうことがあります。しかしウエステルダムだと混雑していると感じることは多くありません。

ホーランドアメリカ ラインのウエステルダム船内に飾られた彫刻

白と濃紺で彩られたエレガントな船体、良質なチーク材を使ったデッキ、レストランやバー、ラウンジなどに飾られるのは生花、また船内をアンティークや美術品で装飾しているなど上質で落ち着いた雰囲気が特徴です。
そのためか乗船するゲストの年齢層もかなり高めです。(初めて乗船した時には、あまりにも年齢層が高く、また子供がほとんどいないのでびっくりしたものでした)

ホーランドアメリカライン、ウエステルダム号については、それぞれ次の記事で詳しくご紹介しています。

当初のウエステルダムのクルーズスケジュール

ウエステルダム号の当初のクルーズスケジュールは以下の通りです。

クルーズ名14-Day Taiwan & Japan 
出港地香港
帰港地上海
出港日2020年2月1日(土)
帰港日2020年2月15日(土)
寄港地マニラ(フィリピン) ⇨ 高雄(台湾) ⇨ 基隆(台湾) ⇨ 石垣島(沖縄) ⇨ 那覇(沖縄) ⇨ 長崎 ⇨ 釜山(韓国) ⇨ 佐世保(長崎)

香港を出港し、日本の長崎や佐世保、韓国の釜山などに寄港し、上海で帰港する14泊15日のクルーズでした。

しかし香港を出港直前に、帰港地が上海から横浜に変更、寄港地も長崎、佐世保がキャンセルとなり、代わりに福岡、清水に寄港することになりました。

ウエステルダム号の変更後の航路

フィリピンで入港を拒否

予定通り2月1日に香港を出港したウエステルダム号ですが、2月3日に寄港を予定していたマニラ(フィリピン)への入港を拒否されたため、予定を1日早めて4日に高雄(台湾)に寄港。高雄でオーバーナイト(*)となりました。

乗客38人に発熱やせきの症状がみられましたが、中国本土への旅行歴がないことから台湾の衛生当局は下船を許可。
しかし、4日夜に衛生当局は38人に5日の下船を禁止。

ウエステルダムは5日に高雄を出港。
翌日の6日は台湾北部の基隆に寄港する予定でしたが、基隆への寄港はキャンセルとなりました。

(*)オーバーナイトとは、寄港地で一泊以上停泊すること。

入港拒否で行き場失うクルーズ船「ウエステルダム」 政府対応焦点に – 産経ニュース

横浜港に停泊中のクルーズ船で新型コロナウイルスの集団感染が広がる中、国土交通省は7日、新型コロナウイルスによる肺炎を発症した恐れのある人が確認された香港発のクル…

日本政府が入国拒否を発表

「船内で新型コロナウイルスの感染症を発症した恐れのある者が確認された」として入国管理法に基づき外国人乗客らの入国を認めない」と6日に日本政府が表明。

7日は石垣島、8日には那覇への入港を予定していましたが、日本国内への入港は中止となりました。

客船ウエステルダム乗船の外国人は入国拒否 安倍首相が表明 新型コロナで | フネコ – Funeco

安倍首相は2020年2月6日(木)、総理大臣官邸で「第6回 新型コロナウイルス感染症対策本部」を開催、この中で、香港を出発し日本へ向けて航行しているホーランド・アメリカ・ラインの客船「ウエステルダム」について、外国人の乗客の入国を拒否する考えを明らかにした。

一方、ホーランドアメリカラインは自社のツイッター、ブログを通じて、船内では新型コロナウイルスが疑われる事例は見つかっていないと述べています。

グアム、タイ、韓国から入港を拒否される

2月8日、ホーランドアメリカラインは、ウエステルダム号は台湾の沖合を南西方向に航行、また入港可能な寄港地の調整を行っていると発表しました。

上記の発表前の2月7日には、アメリカ国務省からウエステルダム号の入港要請があったグアム政府は、受け入れを拒否したことを公表していました。

グアム政府、米国務省から「ウエステルダム」入港受入れを求められるも拒否 | フネコ – Funeco

グアム政府は2020年2月7日(金)、乗船者に新型コロナウイル感染の疑いがあるホーランド・アメリカ・ラインの客船「ウエステルダム」に関し、アメリカ国務省から入港を受け入れるよう要求があったものの、これを拒否したと公表した。

10日、ホーランドアメリカラインは帰港地としてタイのレムチャバン港に向かっていることを発表しました。

 

しかし、11日にタイのアヌティン保健相はフェイスブック上で「タイの港への入港を許可しないよう指示した」と表明。
タイ政府もウエステルダムの入港を拒否することを明らかにしました。

日本など入港拒否のクルーズ船 タイでも入港認められず | NHKニュース

新型のコロナウイルスに感染した疑いのある乗客がいるとして日本などが入港を拒否したクルーズ船「ウエステルダム」について、船…

www3.nhk.or.jp

またウエステルダムは釜山(韓国)にも寄港する予定でしたが、韓国の検疫基準により釜山への入港は断念。

クルーズ船が釜山寄港取りやめ 検疫基準強化で=韓国 | 聯合ニュース

【釜山聯合ニュース】日本に停泊中のクルーズ船内で新型コロナウイルスの集団感染が発生したことなどを受け、韓国当局が検疫基準を大幅に強化した。これにより、韓国の港に入港する国際クルーズ…


 
 

カンボジアへ入港

12日、ホーランドアメリカラインは、カンボジアの南部の港湾都市シアヌークビルに向かっていることを発表。

そして13日にシアヌークビルに到着。

船も港に入港でき、14日朝にはゲストの下船が始まりました。

なお、ウエステルダムの船内に新型コロナウイルスの疑われる事例はないことを改めて表明しています。

マレーシア政府がウエステルダム乗客の感染を発表

2月15日、ウエステルダム号を下船しクアラルンプール空港に移動した乗客の米国人女性が新型コロナウイルスに感染していることを確認したとマレーシア政府が発表。

「ウエステルダム」乗客が感染 – ロイター

 【シアヌークビル、プノンペン共同】マレーシア政府は15日、カンボジア南部シアヌークビル港に到着したクルーズ船「ウエステルダム」を下船しクアラルンプール空港に移動した乗客の米国人女性(83)が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表した。

ホーランドアメリカラインは、現時点での検査は予備的なものであり、二次検査の結果を待っている状態だと発表しています

また、2月10日に2,257人のゲストと乗組員全員が体温検査を行なった結果、発熱者はおらず、乗船前14日の間に中国本土に旅行した者はいないということを改めて表明しています。

ホーランドアメリカラインもウエステルダム乗客の感染を発表

2月16日、ホーランドアメリカラインは公式のツイッター、ブログを通じて、下船したゲストから新型コロナウイルスの陽性反応が出たことをマレーシアが発表したことを伝えました。

なお、現時点では搭乗中または帰宅途中の他のゲスト、さらに乗組員からの病気の報告はあがっていないことも述べています。

2月17日、2月29日出港の日本(横浜)発着の14日15泊クルーズの中止も発表されました。
なお、2月29日の次の3月14日以降出港のクルーズについての中止は発表されていません。

日本では、ウエステルダム号の外国人乗客に対して、下船後も入国を拒否することを発表しています。

ウエステルダム号乗客、下船後も入国拒否 入管庁発表  :日本経済新聞

出入国在留管理庁は16日、クルーズ船「ウエステルダム号」を下船した外国人についても入国を拒否すると発表した。出入国管理法第5条第1項14号に基づく措置。入管庁は「下船した後他国に入国し、新型コロナウ

ウエステルダム乗客の新型コロナウイルス感染の波紋

ウエステルダムを下船した乗客から新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たことで、ウエステルダム船内に残る乗客や、マレーシアに滞在している下船者にも検査を実施することを発表。
タイ政府は乗船していた外国人の入国を拒否することに。

乗客の肺炎感染で波紋 下船者通じた拡大懸念―ウエステルダム号:時事ドットコム

【バンコク時事】カンボジアに到着したクルーズ船「ウエステルダム」号から下船した乗客に新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たことが波紋を広げている。運航会社は船内に残る乗客乗員とカンボジアに滞在する下船者に検査を実施するほか、帰国した搭乗者にも診断を受けてもらうと説明。周辺国は下船者を通じた感染拡大への懸念を強め、タイ政府は乗っていた外国人の入国を拒否する方針を決めた。

2月16日、マレーシアに滞在しているゲストに対しての検査が終了し、全員が陰性だと発表しています。

ウエステルダム号の乗客数は1,455人、乗員数は802人。乗客の出身国・地域は41にわたり、最も多かったはアメリカとなっていました。

船内には乗客255人と乗組員747人が残っており、彼らの検査は数日中に終わる見込みだとしています。

クルーズ船「ウエステルダム」乗客の帰国で対応急ぐ-世界の衛生当局 – Bloomberg

香港を出港した後、新型コロナウイルス感染者が乗船している可能性があるとして日本などから入港を拒否され、現在はカンボジアの港に停泊中のクルーズ船「ウエステルダム号」の一部乗客らは帰国の途に就いている。しかし下船した米国人女性1人の感染が判明したことから、世界の公衆衛生当局は迅速な対応を余儀なくされている。

なお現時点でも3月14日以降の横浜発着クルーズ中止についての発表はありません。

2月19日、カンボジア保健省が781人の乗客の検査結果が陰性であったという内容のプレスリリースを出したことをホーランドアメリカラインは公式ツイッターで発表しています。

また、船内に残っていた乗客の下船も完了しました。

ウエステルダム号乗客に新型肺炎感染なし 全員の下船完了―カンボジア:時事ドットコム

【バンコク時事】カンボジア保健省は19日、南部シアヌークビルに入港したクルーズ船「ウエステルダム」号について、船内に残っていた乗客と下船してプノンペンに滞在していた乗客計781人に新型コロナウイルスの検査を実施した結果、全員が陰性だったと発表した。

今後のアジアクルーズについて

2月20日、ホーランドアメリカラインは、3月14日以降のアジアクルーズの催行について今週末までに決定を行うと発表しています。

ウエステルダム号乗務員の検査結果を発表

2月20日、ホーランドアメリカラインは、ウエステルダムの747人の乗組員の新型コロナウイルス検査が陰性であったことを公式ブログで表明しました。

なお2月29日の横浜発着クルーズのキャンセルは確定していますが、その後の日程についてはまだ発表されていません。
ただ、ウエステルダムはさらに数日間はカンボジアのシアヌークビルにとどまる予定だと述べています。

ウエステルダムのアジアクルーズは中止

2月21日、ホーランドアメリカラインは、公式ツイッターとブログを通じ、3月と4月のウエステルダムでのアジアクルーズ中止を発表しました。

中止となるクルーズは以下の通りです。

  • 3月14日〜28日:14-day South Korea and Japan
  • 3月28日〜4月11日:14-day Japan Explorer, sailing roundtrip Yokohama
  • 4月11日〜25日:14-day Japan and Russia, sailing roundtrip Yokohama
  • 4月25日〜5月10日:16-day North Pacific Crossing, sailing Yokohama to Vancouver

2月26日、ホーランドアメリカラインは、公式のツイッター、ブログを通じて、ウエステルダムの乗客と乗務員が帰国したことを発表しました。
また既に発表があったように3月・4月のアジアクルーズは中止となり、5月のアラスカクルーズまでのプランについては現時点では確定していないことも述べています。

これまでのウエステルダムに関するホーランドアメリカラインの発表内容は以下の公式ブログで紹介されています。

ウエステルダム号を含むホーランドアメリカライン全船の運航停止

3月14日、ホーランドアメリカ ラインはウエステルダムを含む所有する全船において5月14日までのクルーズ運航中止を発表しました。

ウエステルダムに関する記事はこちら

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